当院ではからだへの負担が少ない低侵襲手術を標準治療としています
当院では食道がんに対して、頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶリンパ節郭清を行い、食道を切除する方法を標準手術としています。当院の特色として、食道がん手術を「がん切除」と「再建」に分け、 がんの進行度に応じ手術方法の個別化を行っています。 また、呼吸機能に問題がある方や80歳以上のご高齢の方に対しても、積極的に手術を行っており、「2期分割手術」や「縦隔鏡を用いた非開胸での手術」など、よりからだへの負担が少ない手術を行っています。
当科の「からだへの負担が少ない食道がん外科治療」
ロボット支援手術
現在、当院が積極的に行っている「最先端のロボット手術」では、「内視鏡手術では不可能とされていた動き・視野が可能」となり、さらなる手術成績と QOL (生活の質)の向上が期待されます。
ロボットが自分の意志で手術をするわけではありません。精密な内視鏡下手術を行うことを支援するための最新鋭コンピュータであり、 外科医の意志で、4本のアームを操り手術を行います。執刀は、専門の認定を受けた熟練の医師のみが行います。
ロボット支援手術の特徴
人間の手首のように
自由自在に動く先端
人間の手首のように自由な屈曲や回転が可能。精密で安定した多関節機能を備えます。
小さな動きもブレない
手ブレ補正機能
大きな手の動きを小さな鉗子の動きに変換、人間の自然な手ぶれが伝わらないよう自動補正。
人高解像度3Dカメラで
より見やすい映像
高精細な3次元拡大映像で、臓器機能を温存したがん切除をより正確に行うことが可能です。
小さい傷での手術が可能
従来、食道がん手術は、大きく胸を開いて癌を切除し、大きくお腹を開けて再建する手術が行われてきましたが、現在の手術では、 右記の通り小さい傷での手術が可能となりました。また、高解像度3D映像によって拡大されてより鮮細にわかりやすくなった画像を基に、 確実に食道と病巣を切除することができるようになりました。
対象の患者さん
がん切除:ロボット支援下手術/胸腔鏡下食道切除
うつぶせで、手術器具を入れるポート(手術器具を入れる筒)を5~6個用いてがんを切除します。傷の大きさは、0.5~1cmと非常に小さいです。
注:イラストはイメージです。手術の概要を理解するためのもので、実際の手術とは異なる部分があります。
再建:ロボット支援下手術/腹腔鏡下再建
過去に開腹手術を受けたことのない患者さんに対しては、お腹を大きく開けずにポートだけで手術を行う、腹腔鏡下胃管再建術を行っています。 さらに、へその周囲を約4cm切開し、胃袋を食道の代わりとなるように胃管につくり変えます。
注:イラストはイメージです。手術の概要を理解するためのもので、実際の手術とは異なる部分があります。
手術前後のからだの状態
手術前 手術:胃を切って胃管をつくる 手術後
ロボット支援手術についてよくある質問
Q.ロボット支援下手術のいちづけは?
当院では、ロボット支援下手術を標準治療にしています。
Q.ロボットが手術する?
いいえ。ロボットが自分で手術をするわけではありません。ロボットは精密な内視鏡下手術を支援する最新鋭コンピュータ。熟練の外科医がアームを操り手術を行います。
Q.費用が高額?保険適用される?
食道がんにおけるロボット支援手術は平成30年より保険適用になりました。
Q.術後の痛みは?
ご安心ください。患者さんの体に小さな穴を開けて行う、傷口が小さい手術です。そのため、開胸手術や開腹手術に比べて手術痕はほとんど目立たず、より少ない出血量で術後の痛みも軽くなります。
縦隔鏡手術
縦隔鏡手術とは
頸部・腹部のそれぞれにポートを留置します。
胸腔を経ることなく、双方向から食道まわりの臓器を剥がしていき、トンネルを開通させるように食道がんを切除します。胸部にはポートが入りません。
胃袋を食道の代わりとなるように胃管につくり変えます。
対象の患者さん
手術前後のからだの状態
手術前 手術:胃を切って胃管をつくる 手術後
二期分割手術
二期分割手術とは
80歳以上のご高齢の方や臓器障害をもつ方では、体への負担が大きく、一期的に手術を行うと、多くの場合、術後に質の高い日常生活が営めません。 そのような方に対して、当院では、切除と再建を別の時期に行う「二期分割手術」を行っています。
1期目
2期目
対象の患者さん
がん切除(胸腔鏡下食道切除)
二期分割手術では、1回目のがん切除を行う前に、胃カメラを用いて胃ろうを(内視鏡的胃ろう:PEG)を造設します。うつぶせで、 手術器具を入れるポート(手術器具を入れる筒)を5~6個用いてがんを切除します。傷の大きさは、0.5cm~1cmと非常に小さいです。
注:イラストはイメージです。手術の概要を理解するためのもので、実際の手術とは異なる部分があります。
一時退院(リハビリテーション)
いったん退院し、胃ろうによる栄養管理とリハビリテーションを行い、臓器機能の回復を待ち、条件が整ったら再入院します。
再建(腹腔鏡下再建)
2回目の手術となる再建術と食道ろうの閉鎖を行います。
注:イラストはイメージです。手術の概要を理解するためのもので、実際の手術とは異なる部分があります。
手術前後のからだの状態
1期目手術 在宅リハビリ中 2期目 手術 2期目 手術後
「からだへの負担が少ない食道がん外科治療」のメリット
1
痛みが少ない
従来の手術と比べて傷が小さいので痛みが少ない
2
術後早期から歩行・リハビリ
痛みが少ないため翌日から歩行が可能に
3
早期退院・社会復帰
術後14日目前後で退院早期に日常生活に戻れる
約80%の患者さんが、術後2週間前後で退院されています。
0日目
集中治療室 1日目
離床・歩行練習 3-5日目
一般病棟 6-8日目
飲水・食事開始 12-14日目
退院
Schedule 治療スケジュール
予約から検査までのスケジュール
診療から手術までのスケジュール(Stage II~IIIの主な例)
・標準的な3剤による術前化学療法の場合